7.22.2009

Shisyo

朝、カラテの師匠が家に来る。今日は僕の部屋までは来ず、玄関のガラス戸の向こうに大袈裟に張り付いて待機するという奇抜なアイデアで僕を笑わそうとしていたらしいが、ちょうど母親の出勤時間だったので、母親を大層驚かせてしまったようだ。そして僕は母親の声を聞いて、「それ、師匠が来たぞ!」と思った。

以前、組み手中に僕がヒートアップし、それに乗っかってヒートアップした師匠のハイキックが僕の首もとに入ったことがきっかけで、カラテの練習はあまりやっていない。


朝から何をしているかというと、もっぱらキャッチボールをしている。今日は途中からかなり強めの雨が降っていたので、僕は「止めたいんだが、どうだろうか」と師匠に打診する。しかし師匠は「誰もやらないことこそ、やるんだよ」というような事を唇を振るわせながら言う。どうしても帰りたかったので、僕は腹痛を訴えてみると、なんとか帰らせてくれた。

僕は帰ってすぐにトイレにいくふりをして、シャワーを浴びる。風呂場から上がって、クーラーの効いた部屋でのんきにタバコを吸う。すでに帰ってきてから40分は経とうとしていた。
何か、師匠がしびれを切らしたように、「あの、一時中断ということだよね。君、シャワー浴びてたよね。」と、いくつかの確認をしてきた。
師匠は僕がトイレに行ってる間、シャツを乾かしながらシャドーピッチングをして、体が冷えないようにしていたようだ。
またハイキックをくらうとたまらないので、「ごめんなさい、今日はお腹が痛いので、もうできません」と嘘を言った。
「そうか、まだ投げたいんだけどな」と師匠は寂しそうに言って帰ろうとした。シャツがまだ乾いてないようだったので、僕のB.V.Dの肌シャツを渡すと、「これ、めっちゃええやつやないか!」と喜んで帰っていった。


昼過ぎ、僕が雑誌のインタビューを録音したものを文字に起していたら、師匠がやってくる。「お弁当があるから、食べていっていい?」と聞くので、若干邪魔くさそうに僕は「いいよ」と答える。
師匠は僕の背中に色々と喋りかけてきたが、3回に1回は聞こえないふりをした。
知らない間に師匠はいなくなっていた。

夕方、師匠がまた来る。今度は「薬、飲んでいい?」と聞く。それは昼食後に飲むやつだったのに、忘れていたのだろう。僕は「いいよ」と答える。そしてすぐに帰っていった。


夜、帰宅した母親が、「師匠、今日は張り付いてたよ」と、僕に報告する。
僕は、「は虫類みたいに言わんといてくれ」と返した。

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