4.23.2009

Interrupt

memo090422

今日は大阪の南のほうで芸術大学の学生と込み入った話をしていた。
喫茶店の中でのことなのだが、その込み入り加減がピークに達した頃にちょっとした出来事が起こった。
ちょうど、話の中で僕が一番興奮した様子で声のトーンが高め、顔も30センチ程度前にスライドさせたとちょうどその時のこと。

左後方に座っていた青年が、僕ら2人話をしているテーブルにイスごと横付けし、テーブルをバン!と叩くなり、「とてもおもしろい話をしているとお見受けしました、僕もその話に参加させてもらってもいいですか」と血走った目をしながら語りかけてきた。

僕は東京で一度、「手相の練習をしてるんです、手相を見させてくれませんか」と可愛らしい女性に声をかけられて、喜んで手を差し出してスキンシップを堪能していたら危うくキャッチセールスの餌食になりそうになった経験がある。とある宗教の宣教師に声をかけられ、興味本位でついていっていろいろ話を聞いていたらなんだか退屈になって、でも急に帰りますという勇気もなく長い間頭を空っぽにしなければいけないという経験もあった。

なので、何かしら悪い奴(何かしらデメリットを与える奴)のパターンかな、なんて思っていたが、とにかく「会話に参加させてくれ」ということをばかりを要求してくるので、新しいメソッドだなと思った。たしかに危ない目をしていたが、それは決死の覚悟でイスを横付けした際の興奮に由来するものなのかもしれない、本気なのかもしれない、という思いがさらに芽生え、「はい、いいですよ」と答えてみた。
すると、堰を切ったように彼は自分のことを喋りだしたので、「ちょっと、ちょっと、それじゃあ違うじゃないか」ということになり、一旦横付けしたイスを元に戻してもらい、こっちの話を一旦区切りついてからにしてくださいを頼んだ。

若干左後方に戻った青年のことが気になりつつ、大事な話を終わらせてから、呼び戻した。同じようにイスを横付けして復帰してきた。話を聞くと、彼はカフェや居酒屋など、人が集まる場所に出没しては聞き耳を立て、興味のある会話があったら割り込むということを繰り返しているらしい。ほとんどが無視されるか、罵声を浴びせられるかのどちらからしいが。そして「昔は別に普通だったと思うんですよ。銭湯とかで横にいる人に声をかけたり、居酒屋とか喫茶店とかでも出会いがあったり。今が冷たすぎるんですよ」と言う。
にしても、イスをギューンと横付けしたり、バンをテーブルを叩いたりといったダイナミックな動きで来られると誰でも驚くだろうに、と思いつつも、「これがダイナミズムってやつなんだよ!」と言われてるような気もした。頭で考えてたらわからないことなんだけど、とにかく僕の心が受け入れ態勢を作ったのだから、もう彼を認めるしかなかった。これがダイナミズムなんだ!

会話に割り込む直前は、色々とシミュレーションをし、断られた場合のことももちろん計算の上で(だからすぐに店を後にするために荷物を一通り片付けてから実行するらしい)、何より直前の緊張感がたまらなく快感なのだそうだ。

普通に素性を明かし合い、各々のことを聞き合って、また会おうということで別れた。
もしかしたら、この後、巧妙な手段で僕を麻薬中毒にするかもしれないし、しつこく宗教の勧誘をしてくる可能性だってある。
その結末をシミュレーションし出すと不安になるが、少なからず、この出来事自体は、しょうもないテレビを見てるよりはすごくエキサイティングで興奮すべきものであったし、どんな胡散臭いキャッチセールスみたいな奴らよりもナイスな手法だったので、それはそれで「あっぱれ」になりそうな、そんな幻覚すら見えたので、飲み込んだ。
あんなダイナミックなコミュニケーション方法があったんだなんて僕の経験上には無かったから。

今後もこの「割り込みコミュニケーション・メソッド」は、彼が詐欺師に豹変するまではなんとかくらいついて世の中に広めていきたい。

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