4.29.2009

Missing

アパートの一室には、住人が5年前に失踪したままの部屋が残っている。
以前、夜中に入った時は、本当にすべての生活用品一式がその部屋に残っていて、生活感すらも感じてしまったがために「誰かいる!」という疑念に駆られ、あろうことか、「死体が見えた」という発言をしてしまい、関係者を混乱させてしまった。

先日、ちょっとした理由で改めて明るい時間帯に立ち入ったが、僕が死体だと錯覚したのは、クルンとなってる毛布だった。
でもその時もまだ恐かった。「誰もいるはずがない」という表層にある薄っぺらい現実に対して、生活の臭いに由来する「誰かがいる」という肌感覚。やっぱり直感的な方が勝ってしまうため、合理性が見いだせない。だからそれはもう恐怖になってしまう。

そして一昨日、また立ち入った。恐怖に勝てるのは慣れであったり、この場合は表層の現実が強くなることだったのだろう。カメラを構える勇気も出てきた。
ディティールを覗けば覗く程、失踪した住人の姿が浮き彫りになってくる。
夜逃げや蒸発の原因はほとんどが借金とか生活苦であるため、簡単に弄ぶことはできない。そんなことを友人に強く諭され、興味本位でこの部屋のことや住人のことをあけすけに発信するべきではないと承知の上ではあるが、こんなに心をくすぐられる空間は無いと思った。

演歌のカセット、競馬の雑誌、そしてプレイステーション。
食器とか服は荒く置かれてるけど、趣味のプラモデルはキレイに並べてある。

ちょっとプレイステーションは預かっておこうかな、と思いつつ、さすがに悪いような気がしたのでそのままにしておいた。

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