6.24.2009

Simulation!

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6月上旬、雑誌を作った。
語呂がいいので、「月刊」という冠をつけた。だから隔月くらいの頻度で作っていくことになったし、今も次号の準備をしている。

出来上がってからは、僕が好きな本屋さんとかを中心に、そして適当に街を歩きながら委託販売の交渉をした。
一番最初に持っていったのは、神戸の頑固オヤジの店。自費出版系は連絡とか処理がめんどくさいから置かないって言われた。
でも中身を読んでもらったら、「ほな2冊だけ」って言って買ってくれた。頑固オヤジのクセに、目が優しかった。

好きじゃないけど、たまたま通りかかったハードコアなレコードショップがあって、「こんなとこで売ったらおもろいな」と思って飛び込んだら、ヒゲを中途半端に延ばした兄ちゃんが、「これジャンルは何なの?そんなもん売れるかよ」って吐き捨てるように言ってきた。その後も、「ジャンル」を聞いてくるお店は絶対置いてくれなかった。「無いです」って答えるから。ジャンルって何なのか未だにわからない。

ちょっと大きめのお店には、電話をしてからメール便で送った。
どこもちゃんと返事をしてくれたし、「おもしろいですね」って言ってくれて、いくつかのお店で取り扱ってくれることになった。

一冊300円の雑誌だから、売れてもお店に入るお金は90円。それなのに、どこの馬の骨かわからんような人間が作った雑誌をじっくり読んでくれたり、感想を言ってくれたり、お店で売ってくれたり。もう10店舗を超した。お金を出して、手続きをしたら、自動的に流通に乗せてくれて、もっとたくさんのお店で売ることはできるらしいけども、そんなんせんくて良かった。「おもろいから売ったる」って言ってくれた人に預けたいから。
ビジネスだとかマーケットだとか流通だとか、そんなんおかまい無しに、「おもろいかおもろないか」「好きか嫌いか」を価値基準にしてる人がまだまだたくさんいるんだって思えて嬉しかった。

もちろん、そんな香りを醸し出してるお店にしかアタックしなかったんだけど。
いろいろと自分なりに街歩きを続けてたから、そういう匂いも感じれるようになったのかな。



内容は、一貫してシミュレーションをするというもの。
シミュレーションっていうのは、例をあげれば、女の子と初めてデートする時の直前に、「ここでナニして、あそこでナニして、最後にナニして」って完全な主観で一旦ストーリーを作りあげてしまうようなこと。その勝手な感じというか、自分の頭の中で一旦すべて答えや結論を出してるところがおもしろい。そして、頭の中でやっちゃうことは自由だ。自由だからこそ、シミュレーションっていうのは、人類の最後の砦になるのかもしれないし、救いにすらなる。

僕のおじいちゃんは、寝たきりになった今でも、老人ホームのベッドの中で「家に帰ったら庭の掃除して、アパートをキレイにして、家を増築して、、」ってボヤボヤとシミュレーションし続けている。現実とのギャップがえらいことになってる。でもなんか無意味なことじゃないような気がして。



何しろ僕が一人で編集をしてしまっているため、親切心もくそもない、普通の商業雑誌であるような「はい、ここで笑ってください!、はい、ここがおもしろ情報です!」みたいな構成ではまったくない。読む人が自分から「おもしろポイント」を探さないといけない。
これは意図的なことではなく、もう時間と技術とセンスがそうさせてしまっている。
でもそれが人間にとって重要なことだとも思ってる。もちろん愛の無い人にとっては、鼻で笑って終わりなんだけども。


どんなことでも、鼻で笑って終わりなことなんてないんだ!
どんな生き方でも、どんな作品でも!


結果的にそういうメッセージも後付け的に加えてる。それだけポイントがブレててわかりにくい。


とはいえ、たった一人でできるはずもなく、文章を書く人、写真を撮る人、絵を書く人、きっかけを作ってくれた人、いろんな人に協力してもらっている。おじいちゃんがいた部屋を架設の編集室にして、サラリーマンやフリーターや学校の先生をやっている友人に来てもらって校正作業をしてもらった。京都大学の院生は毎日記念撮影をするというおもしろ企画を実行に移している。


次号は、「別に紙の上でやらんでもええやん」っていうことを紙の上でやってみたい。



月刊シミュレーション特別創刊号

月刊シミュレーション特別創刊号

B5版/52ページ 2009年6月15日発行 定価300円
http://yasegamans.com/

1 comment:

  1. チエ6/26/2009

    ほんと、今って雑誌が売れない時代だからね。
    紙の上でやらんでいいやんってことが、実は世の中を明るくするのかも。って私も東京で仕事しながら思う。
    ペプシのしそ味とかまさにそれ。

    ムダなようで、そういうことが本当は今の時代には必要なのかもね、遊ぶ心の余裕っていうか。

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