4.11.2009

Smile

小学生くらいの時に覚えていることだが、家の近所には、「ニコニコおっさん」という、その名の通りニコニコしながら徘徊していた人で、とても愛嬌があって僕らの中ではちょっとしたマスコット的存在だった名物おっさんがいた。
どこの地域にも、一人や二人、名物おっさんがいたはずだ。僕らの地域の代表は間違いなく「ニコニコおっさん」だった。
ちょっと悪ぶってる友人なんかは、「ラリ夫」という名前で呼んでいたが、あんまりいい気はしなかったので、僕はずっと「ニコニコおっさん」と呼んでいた。

その頃は何も考えていなかったから、徘徊してることに対しては、何か治安を守ってるんだとおもっていたし、小さい小学生を追いかけ回しているのは、その小学生がとても悪い事をしていたからなんだと、思っていた。
高学年になり、物心がしっかりした頃は、ニコニコおっさんの優しさを悪用して、当時は入手できなかったエロ本を買いに行ってもらったりもしていた。

なぜ今になってニコニコおっさんに思いを馳せているかというと、今日たまたま駅の近くで、その本人を発見したからだ。
歩き方や姿勢ですぐに本人だとわかった。
当時のように、「ニコニコおっさん!」と呼ぼうとしたが、止めておいた。
何故なら、ニコニコおっさんがニコニコしてなかったからだ。
パッと見は、シワと顔のつくりからして笑っているような雰囲気なのだが、明らかに昔のようにニコニコしていないということが直感的に分かったし、とてもくたびれた感じになっていた。「ニコニコ見せかけおっさん」でしかなかった。

もうニコニコおっさんが小学生と戯れるようなことができないような地域に成り下がってしまったのか、だとするとニコニコする必要はない。それともおっさん自身にニコニコしてられないような、何か変革があったのか。

そんなことも考えてみたが、ニコニコおっさんがまだ近所にいるということがわかって、なんとなくホッとした。

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